第24回 「何とかなるさ」―ミクロネシアで感じたこと

 南太平洋の島国のマグロの漁獲統計の整備等のために、ミクロネシア連邦のポナペで3年間、毎年3ヶ月程、過ごした。 この仕事も終わったので、思いつくままに、南の島で感じたことを述べてみよう。
 ミクロネシアの人々は、素朴で、おおらかで、我々と違って生き生きと生活している人が多い。 豊かな自然・食料があり、海外からの仕送りなどを受けてのんびりしていて、飢えて困るようなことはない。 親日的な人が多く、日本人には敬意を持っているようで、親切で気のいい人たちが多い。 長い間、日本を含む外国の植民地にされ続けてきたが、日本の統治時代が一番ましで、 今よりよかったという老人にしばしば出くわした。
しかし、しばらく滞在すると、ここの人々もそれ程おおらかで、のびのびとしているわけではないと思うようになった。 まず、アメリカ等のジャンクフードのせいで、肥満はアメリカを大きく超える世界第一級で、 糖尿病や心臓疾患などが大きな社会問題となっている。 白飯にツナ缶やコンビーフをかけただけの食事や、素ラーメンだけの食事が結構幅を利かせている。 昔はそうでなかったと、ローカル食を見直し、芋、バナナ、魚を食べようという運動はあるが、あまり浸透していない。 町を少し外れれば、掘っ立て小屋のような家が多い。台風は、まず来ないし、 マラリアやデング熱もないといって良いし、 毒のある蛇や昆虫もいないから、ぼろ屋で十分なのかもしれない。 それにもかかわらず多くの人は、中古車ではあるが車を持っている。 現金収入が少ないし、ガソリン代もかかるのに、何で車に乗るのか、理解できない。 電気代も日本より高く、潤沢には使えない人が多い。 町の中心部に住んだことがあるが、夜中の12時ころまで、小さい子供まで外で遊んでいる。 明るくなれば起きて、日が沈めば寝る自然な生活などは昔のことで、みんなテレビは良く見るし、 大音響の音楽を響かせながら走る車で、うるさくて寝るのに苦労したことがある。
 ミクロネシアを含む南洋の島国のほとんどの国は、経済的に自立できていない。 欧米や日本等の援助が不可欠だ。先進国のマグロ船が支払う入漁料は、大事な国家の収入源である。 ミクロネシアの人々の大方は、「金は欲しいが、きつい仕事をしてまで稼ぐことはない、 そこそこの生活で満足し、一族のつながりが強いから誰かが何とかしてくれる、 そのうち何とかなるだろう」という風に考えているように思える。当地に来たときは、 こんな考えはとんでもないと思っていた。しかし、このような私の考え方は不遜なものだと気がついた。 というのは、我々、先進国では、原発問題、自然破壊、格差社会等の山積する深刻な問題を解決できずに狼狽し、 将来に大いなる不安を抱えているのに、まがりなりにもおおらかに生きているように見えるこの島の人々に、 そんな大きなことは言えないと思うに至ったからである。「なんとかなるさ」のミクロ的人生観は、 自殺者が毎年3万人を超える日本人にとって身に付けたいと思っても、付けられない人生観かもしれない。