第28回 ゴヤの黒い絵とICCAT

大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の会議となると、いつもそれとともに連想するのが、スペインの有名な画家ゴヤの絵、とりわけプラド美術館にある一連の“黒い絵”である。これらの陰鬱でグロテスクな絵は見ていて楽しいものではない。 しかしながら、この絵は、人間がいかに愚かで、残酷であり、救いがたいものであるか、という忘れがたい強烈な印象を与える。ICCATの年次会議はしばしばプラド美術館のあるマドリードで開催されるので、会議期間に時間があると、あえて、これらの絵を見に行ったものである。年次会議で毎年繰り返される加盟国間の国益の衝突、不毛の論議、科学委員会の勧告の無視等は一連の黒い絵に描かれたものとほとんど同じである。これらの絵を見て、ゴヤの言いたかったことは、“これらの絵から目をそらすな。これがお前たちの直面している人生なのだ、この醜い世界をどう生きるのか考えよ”というようなことではなかったろうかと思う。そう思うと、会議の重圧から少しだけ解放された気がしたものだ。黒い絵を見にいまだ世界中から多くの人が来るが、ICCAT会議の時は、まだこの絵を見に来る必要があるようだ。