第29回 マグロやカジキの性比

資源評価には、漁獲統計の不完全性や成長や死亡率などの生物情報の不足等で、かなりの不確実性が含まれている。性比もこの不確実性をもたらす一因である。人間では男女の比率はほぼ1:1である。ところが、マグロやカジキでは、性成熟期まではほぼ1:1であるがそれ以降は年を取るに従いその比率に大きな偏りが出るようになる。マグロ類では、高齢になると雄の割合が高くなり、カジキ類では逆に、雌の割合が高くなる。また、長生きする魚種ほどその偏りが顕著になり、クロマグロやメカジキなどでは、特にはなはだしい偏りが見られる。性比に偏りができる原因については、雄と雌で死亡率や成長率が異なることがあげられるが、漁法、漁具、漁場の違いもそうだ。一見単純に見える性比ではあるが、それには複雑な要素が絡み合っており、その実態に迫るような研究はいまだになされていない。性比の偏りを無視して資源評価を行うと漁獲による影響が見かけ上かなり過大に見積もられることになる。その結果資源状態が実際より悪く評価されてしまうことになる。この典型的な例が北大西洋のメカジキであり、雌雄別の年齢組成を資源評価に使って実証したことがある。実際の資源評価を雌雄別に行うには、これらのデーターが必要であるが、これを集めるには莫大な労力が必要であり、なかなか実現しない。それで、不確実性がどうしても残ることになる。資源状況の長年にわたる観測と様々な漁業情報などにより、少しでも不確実性を克服するのが、科学者の仕事だが、不確実な要因をめぐって科学者間の意見が分かれ紛糾することが多い。