第32回 ミナミマグロ蓄養におけるステレオカメラの導入が早急に必要

ミナミマグロ保存委員会(CCSBT)の科学者は、本年10月、豪州(アデレード)で開催された年次会議で、ミナミマグロの蓄養生簀にステレオカメラを設置することが、再度、延期され、またもや深い失望を味わった。ステレオカメラ導入を巡るごたごたは、ミナミマグロ資源の回復基調が明瞭となり、2期連続で大幅な漁獲割り当て(TAC)が増加したなかで、ミナミマグロの資源管理上、今や未解決の問題の最大の懸案となった感がある。
CCSBTの科学委員会は、蓄養されるミナミマグロの尾数や重量を正確にモニターするのにステレオカメラの使用が最良の実用的方法であるとして、その使用を勧めている。 ミナミマグロを蓄養しているのは、豪州だけであり、豪州のほぼ全量に近い漁獲枠(TAC)を用いて蓄養をおこない、そのほとんどが日本に輸出されている。種苗となるミナミマグロは2〜3歳魚で、まき網で漁獲され、これを生かしたまま曳航用の生簀に移し替えられる。曳航後さらに蓄養用の生簀に移されて、そこで6か月程度蓄養されて日本向けに出荷される。漁獲されたミナミマグロの尾数と重量は蓄養生簀に移した後に推計される。
まき網で漁獲され、蓄養生簀に収容されたミナミマグロの数量の推計は、操業ごとに40尾(2年前から100尾)を生簀の中から漁獲し、一尾ずつサイズ・重量を計測し、この数値を基に全量を推計している。しかしながら、この方法による推計は不正確となることを免れず、まき網船による漁獲量はTACを超過しているという疑問を生む源ともなっている。この件については、科学委員会で盛んに論議され、その議論を踏まえて、問題の解決を図るために、ステレオカメラの使用を勧告している。 豪州もステレオカメラの導入の必要性を認め、一昨年、昨年と導入を約束したが、それを実行せずに、今年からの実施を約束してきた。 それにもかかわらず、10月に行われた年次会議では、導入は、業界の経済的負担が過重となるので実施ができないと説明し、延期となったのだ。皮肉なことに、ステレオカメラ販売業者によれば、豪州製のステレオカメラは性能がよく、その精度の高さと価格から、蓄養業者の間で、豪州国内のみならず、国際的にも広く使われているようだ。ステレオカメラの性能の向上を背景に、大西洋まぐろ類保存委員会(ICCAT)では、大西洋クロマグロのまき網による漁獲量及び蓄養に回されるクロマグロの総量の推定精度の改善のために、この方法の使用を義務づけている。ステレオカメラの使用は正確な漁獲量の推定の為に蓄養に関連する漁業者にとって必要のみならず、CCSBT,ICCAT,IATTC(全米熱帯マグロ類委員会)等世界のマグロ漁業管理委員会にとっても適切な資源管理を行うために必要となっていると思う。ステレオカメラの使用の開始の遅れは、豪州が自国のTAC超過に関する疑惑を払拭する機会を失わせるばかりでなく、むしろ増大させるだろう。また、引き続く導入の遅れはCCSBTの管理能力にも疑念を生じさせ、CCSBTにとっても不名誉なことであると言わざるを得ない。