第6回 「WCPFCへの日本の貢献」

 さて、これまでのポンペイだよりでは、肝心の私の仕事について十分には説明されていないことに気づい

たので、遅まきながら紹介したい。

 ポンペイでの私の主な仕事は、日本が中西部マグロ管理委員会(WCPFC)に提供している日本の信託

資金(Japan Trust Fund:JTF)の有効な活用を管理することである。このJTFは2006年から10年までの5

年間にわたり、毎年約4500万円をWCPFCで多数を占める発展途上の島国に提供している。目的は、マ

グロ資源・漁業管理に関する島国の一般的な対処能力を増加させるために、資源評価を主とする科学的側

面と、国際・国内的規制取り締まり順守義務、オブザーバー制度など、実際の資源管理にかかわる側面に

わたって使われるものである。

 毎年、どのような事業に使いたいかの提案を募集し、私を含めたJTF管理委員会(提供元の水産庁担当

官、WCPFC事務局長らで構成)で審査したうえで、資金を活用している。事業の実施は、科学面は太平洋

諸国事務局(SPC)とフォーラム漁業局(FFA)を通じて行われる。島国の人々の能力アップということが目

的なので、単にPCを買ってくれとか、コンサルタントに業務を丸投げするとかいう事は、認められない。

 今年は、これらの事業が実際にどのように行われているかを見るため、SPCのあるニューカレドニアのヌ

メアで行われた資源評価の初級者向け研修コースに参加した。この研修は5日間にわたって開かれ、PN

G、ソロモン、バヌアツ、トンガ、トケラウ、キリバス、ニウエなどから約10人の参加があり、講師はSPCの

D.Bromhead博士が昨年から務めている。

 彼は、若手ではあるが熱心で、謙虚なところが受講者からも好まれており、私も感心した。分厚いファイル

を渡され、こちらもすっかり受講生の気分となった。なお、このSPCには、外洋漁業部門(OFP)があり、OF

PはWCPFCと契約を結んで、メバチ、キハダ、ビンナガなどの主要資源の資源評価を任されている。

 したがって、講習に使われる資料は大変充実しており、パワーポイントを何種類もセクションごとに用意

し、臨場感に富んだ気分で、資源評価とはどういう風に行うのかを理論と実行にわたって理解させてくれる。

もちろん質疑応答が行われるし、テストではないが、理解度のチェックが毎日ある。午前中に講義、午後か

らはPCを使った実習というパターンで行われる。

 一応受講者は、ある程度の事前選択をパスした者だが、個人個人では知識にかなり差があるようで、これ

をうまくカバーしての講義は、時々私もコメントをしたりするが、簡単ではない。とりわけWCPFCで使われて

いる資源解析モデルは誠に複雑で、高度な数理統計を使っているので、これを理解させること、あるいは説

明しきることは至難の業である。初級コースであるから、なおさら大変で、ここのところは分からなくてもいい

とか、講師も私もよく理解できないとか、苦しい場面も時にはある。それでも、参加者は熱心に勉強してい

て、ぜひ次の上級コースに来年は参加したいと言っていた。

 Bromhead博士が強調していたのは、受講者はデータ収集とか多くのほかの仕事を抱えているので、習っ

たことを忘れがちである。それを避けるために、オンライントレーニングをPCを介して行っており、これが有

効であるとのことである。つまり、この式はどういうことだったのかとか、この理論の短所は何であったかと

か、種々雑多な疑問を、受講後もオンラインで寄せ、答えを聞くことが出来るようにしている。

 また、優秀と思われる受講者には、特訓を受ける機会を与えるなど、工夫がなされている。JTFが実際に

有効に使われていることを確認できたうえ、自分自身の勉強にもなった。(おわり)

資源評価の初心者研修コースの研修風景。
左奥にいるのが講師のBromhead博士、
右奥にいるのがOFPのリーダーのHampton博士