第5回 「ナポレオンフィッシュを食べる」

 ナポレオンフィシュ(以降、ナポと略)という魚を知っていますか?水族館なんかで人気の熱帯魚で、見た

人もいるかもしれない。名前の由来は、年をとるにつれて、おでこがせり出してきて、ナポレオンがかぶって

いた帽子のように見えるので、そう名がついたようだ。日本名はメガネモチノウオといい、こちらは、目のとこ

ろに、眼鏡のつるのような縞(しま)模様があることからきていると書いてある。この魚はベラの類(たぐい)だ

が、2メートル、200キロに達する巨大魚だ。サンゴ礁の浅いところまで来るので、こちらの漁師がモリで突い

てくる。市場で見かけるのは、5キロぐらいの小さいのが多い。

 先日、大家が「ナポのいいのを手に入れたから、お前にやる。すごくうまいよ!」と興奮気味に伝えてきま

した。もらったのは、すでに切り身になっていたが、10−20キロほどの市場で売っているものより大きいサイ

ズ。皮がおいしそうで、ウロコはとってあったが、皮付きだ。白身のきれいな身をしており、早速、刺身、煮

物、蒸し物などにして試してみた。おいしいが、刺身は大味、熱を加えると硬くなりすぎ、ハタやフエフキダイ

よりは味は落ちる。でも地元では、人気の高い魚で、時には数百匹が群れになって泳いでいるのを見るよう

だ。

 何とかもっとおいしく食べる方法はないものかと思案して、思いついたのが、硬すぎる(あるいはシコシコし

するぎる)のを軟らかくする方法。これには、裏から青パパイヤをもいできてすり下ろし、切身に混ぜて軟ら

かくする。パパイヤのタンパク分解酵素は青いものにしかなく、熟れて黄色くなった食べごろのパパイヤに

はほとんど含まれていないとのこと。こうして軟らかくした切身をカレー風味のムニエルにしたあと、香味野

菜と混ぜて、マリネにすると、とてもいい感じになる。

 一方、硬さを生かす方法もあり、熱を加えると、ほとんど鶏肉くらいの弾力が出るので、焼き鳥風にすると

いける。皮付きで、本当に焼き鳥によく似たものができる。

 この魚の小さいのはたいそう軟らかくて中華料理では珍重され、香港などでは大変な高値がつく。そのせ

いで、乱獲されて、ワシントン条約で商取引が規制されている。また、冥(めい)土の土産が一つ増えた。

(おわり)

ナポレオンフィッシュ幼魚(上)は眼鏡のつるのような船線が見える。
成魚(下)はおでこが張り出す。