「マグロのすすめ」 鍋島 佳恵 さん(大阪府在住 会社員)

 友人の家を訪ねる時、私が選ぶ手土産の断トツ一位は「マグロ」だ。手土産といえば、

果物やおしゃれなケーキ、ワイン等を選びがちだが、私の手土産「マグロ」には受け取る

人を絶賛させる裏技がある。

 学生時代、私がアルバイトをしていたうどん屋によく来ていたお客様の一人。市場にあ

るマグロ専門店の番頭さん。名前は知らないので通称「マグロのおっちゃん」が私の自慢

できる手土産を支える影武者だ。

 私が予算と何人前かを伝えると、マグロを「体裁の良い自慢の手土産」に設えてくれる

のだ。

 手土産にマグロを持って行くと、訪ねた先の人は必ず驚く。しかし、食卓に並ぶと皆の

箸は進む。見ているだけで嬉しい。もちろん他の人と土産がダブることは、ほぼ無い。頭

の中で、果物やおしゃれなケーキ、ワイン、そして私が自慢の「マグロ」が本日の手土産

大賞にノミネートされている。ドラムロールが鳴り響く中、ライトが止まる。強敵揃いな

のでどれが大賞を受賞してもおかしくない。大賞は「マグロ」だ。マグロを選んだ私は、

たくさんの拍手を受け、オスカーを手にする。「マグロに関わる大勢の人々、そして誰よ

りマグロのおっちゃんに感謝を述べたい。」マグロコールが止まない中、マグロに関わる

たくさんの人達は照れくさそうに微笑み手を振る。オスカーを手にした私はレッドカーペ

ットを歩む。

 妄想から冷めた私は、マグロの味を忘れないように、急ぎ足で家路につく。