「マグロ、大好き!!」 竹下 晶子 さん (神奈川県在住 会社員)

 海の近くで育ったせいか、刺身をはじめ魚料理は嫌というほど食べてきた。特に刺身は

嫌いな部類に入るくらい食べ飽きていた。スーパーの魚売り場は、ほとんど素通りだ。

 新しく引っ越した地も、海の近く。そこには、昔ながらの魚屋さんが軒を連ねていた。

今では少なくなってしまったが、切り身ではなく魚の形そのままで並んでいる光景が、と

ても新鮮で、私は足を止めたのだった。

「今日は、生の本マグロもあるよ。美味しいよ。」

という言葉に誘われ、久し振りに買い求めたのである。

 食卓に並んだ、大トロ・中トロ・赤身の美しい色のグラデーション。一気に華やかにな

った。その美しさに、自然と箸も進む。同じマグロが、部位によってこんなに味が違うの

かと改めて感心してしまう。それぞれの美味しさを噛みしめながら、今まで深く味わうこ

となく、何も考えずに食べてきた自分自身を恥ずかしく思った瞬間だった。

 本物の味を知ってからは、立場逆転。我が家の食卓には、刺身や魚料理が並ぶことの方

が多くなった。特にマグロの美しさ、美味しさを知ることができ、食事の楽しさも倍にな

ったと思う。料理のバリエーションも増え、家族も大喜びだ。今まで嫌いだと思い込んで

いたのは何だったのだろうと、不思議でならない。

 「魚さん達、ごめんなさい。」

と、謝りたい心境である。

 これからも、食卓にマグロの輝きが並び続けることは間違いない。そして、好き嫌いを

問われたら、

「マグロ、大好き!!」

と、大きな声で答える私がここにいる。