「中年フードファイターとデパ地下の生態系」 西村 雅志 さん (神奈川県在住 団体職員)

私の趣味の一つは買物で、週末には自転車に乗り、スーパーだけでも4ケ所は回る。エコ

だし、体にもいい。玉子(10個)も第三のビールも100円までと決めている。服は某有名

低価格チェーンの安売り専門。おじさんが何を着ようと「そんなの関係ねえ!」という訳

だ。私の様な人種が国の経済の足を引っ張っているんだろうが、これも一日でも早くロー

ンを返して今のストレスフルな生活から足を洗うためだ。夜も妻より帰りが早い日はデパ

地下でおかずを買って帰る。肉は自然に取れるから、できるだけ刺身を食べることにして

いる。生だと大事なDHAを失わずに取れると聞いたからだ。8時前に行くと、物によっ

て2割から半額まで値引きされているが、勝負はここから。それは大よそこういう具合だ。

この日はマダイと国産マグロに目をつけた。隣のIUU(違法無報告無規制)らしきマグ

ロも見た目は悪くない。一先ずそこを離れ他の物を物色して戻って来る。何度もぐるぐる

回ると顔を覚えられるのではないかと思い、多少気が引ける。「このおじさん独身かしら、

単身赴任かしら。」「奥さん家事やらないのかなあ、可哀想。でも来てもらえただけでも

ラッキーよね。」と勝手に頭の中で小説が膨らむが、そもそもおじさんのことなど誰も気

にかける訳がない。再び戻ってみると2割引きが半額に。他のお客もサメのようにぐるぐ

る回っている。隣でおばさんがベルを鳴らして寿司が全部半額に。コイに餌をやったよう

にお客が押し寄せる。寿司か・・・でもご飯は炊いてあるし・・・。IUUマグロの誘惑

をグッとこらえてまた一周。そろそろ妻も帰る頃かな。えーい、決断!結局その日はトリ

にした。新聞は連日漁業者の悲痛な叫びを載せている−燃油高騰、魚価安、後継者不足、

日本の魚食文化はどうなる!だが川下でも小売と消費者の壮絶なバトルが連日繰り広げら

れているという現実は簡単には変わらないだろう。それぞれの立場にそれぞれの闘いがあ

るんだ。