『山は富士、魚はマグロ、家庭の魚食力をつけよう』


〜〜回答編〜〜

質 問

解凍と塩マグロをいっぺんに作るには、濃いめの塩水につけても良いですか。

回 答

お、久しぶりの「塩マグロ」ネタ、来ましたねえ。

冷凍のマグロを解凍する方法については、
そう、賢いOPRT賛助会員は皆知っている、「温塩水解凍」ですね! ぬるい風呂くらいの湯に、マグロの肉の味とだいたい同じ濃さになるように粗塩を溶かし、これに、サクなら1分、ブロックなら3〜5分浸し、水気をよく拭き、固く絞った布巾かペーパーで包んで、急ぐ場合は常温、夜か翌日食べるなら冷蔵庫で解凍、というのが概略である。わかんない人はOPRTのHPのどっかに載っているはずだ。たぶん・・・。(※)

 さて今回の質問は、この解凍と塩マグロつくりをいっぺんにやっちゃってはどうか、ということ。このようなチャレンジ精神が料理の進化を生むのであって、その姿勢・発想はスバラシイ!
 ただ、毎度言うように、料理は「しくみ」であるから、人間の自由勝手にはうまくいかんのだな。チャレンジする発想が自然の摂理にうまく添えたときだけ、ちゃんとした料理になるのです。

では、その観点からこの質問の中身を吟味してみると、
まず、魚の解凍で大切なのは、細胞中の水分が氷の結晶になりやすいマイナス10度前後を速やかに通り過ぎることであるから「温水」である必要がある。水ではダメだ。それから、濃い塩水に凍ったマグロを浸けると、真水につけたときより温度が下がるため、解け方が遅くなる。結果として「緩慢解凍」となるから、細胞が壊れやすくなり、旨味は逃げてしまう。

また、これまで推奨してきた塩マグロは、直に塩を当てて、その浸透圧の差で水分と水溶性の臭み成分を引きずり出し、肉の中に旨味を凝縮する、というしくみであって、これを濃い塩水に変えた場合、ちょっと効果が違ってくる。

も少し詳しく言うと、塩水に浸けることを「たて塩」、直接塩を振ることを「振り塩」と言うが、たて塩は、水分を与えながら塩分を肉にしみ込ませる、たとえばジューシーな干物を作るときなどに用い、振り塩は、塩マグロのように、水分および臭みを外に引き出し、中に旨味を凝縮させるときに用いる手法。これらを用途に応じて使い分けている。

結論として、濃い目の塩水に冷凍マグロを浸けると、緩慢解凍によって壊れた細胞から流出した旨味が外に出つつ、塩分が浸透していくのだが、中心は凍っているために外側の塩気が強くなる、ということになり、ウーン、イマイチ。長々引っ張っちゃってゴメンヨ〜。

でもね、「解凍したマグロ」を濃い塩水に浸けて使う料理は、あるんですよ!
OPRTのHPで、かつて「マグロの底ぢから」という題で書いた中に、タヒチの料理で「ポワソン・クルー」というのがある。ぜひご一読を。

(※)かつお・まぐろの解凍方法はOPRTウェブ「美味しいマグロ」コーナーの「かつお・まぐろをおいしく食べよう」に掲載しています。