『山は富士、魚はマグロ、家庭の魚食力をつけよう』


〜〜回答編〜〜

質 問

イワシを煮たときに、表面の皮がはげてめくれてしまうのですが、どうしてでしょうか。また、めくれてしまわないようにするには何か方法がありますか。

回 答

 お、イワシのお便り来ましたねえ、67歳のご婦人から。
 そうだよなあ、この世代だと、ホントに旨いイワシをご存知なんだよな。
 しかしなんといっても、今年のイワシのすばらしさったらないね!イワシの資源が壊滅状態になって35年が過ぎ、あの“入梅イワシ”の、雪のような脂が、薄い皮の下に2ミリほどもベッタリ塗られたようになって、刺身にしたときの血合いの紅色とのコントラストがほれぼれするようなイワシ。それが今年、帰って来ましたねえ!ようこそお帰りイワシ君。漁場は、銚子沖から三陸沖がすごくいいようですね。

 そういうわけだから、サンマが高いとか、くだらん騒ぎに便乗している場合ではない。サンマが出るまでイワシ食っとけ!今年の海は、そういう事情なのだ。海を人に合わせて考えてはいけない。スーパーで太った25センチくらいのイワシ5尾で300円ほど。漁獲の旬と味の旬が、まさに重なっているのが嬉しいじゃありませんか。今こそしっかり食べて、来たる冬に備えようではないか。

 さて、イワシの料理方法多々あれど、その代表格のひとつが煮付けだ。ひとくちに煮つけといっても甘辛く醤油で炊いたのあり、薄口醤油と梅肉で炊いた梅煮あり。ただし、いずれの場合も皮の銀色をはがさずに美しく仕上げるのが難しいとの声はよく聞くね。
では早速、やってみよう。

【イワシの梅煮】
@ 頭を持って腹を上に向けてまな板に置き、肛門から前方に張り付いている硬いウロコの部分を1センチほど削ぎとるように頭のほうへ向かって切り進み、頭に到達したら、そのまま真下に中骨を切って頭を落とす。
A 包丁の腹もしくは指先で内臓を除き、流水で腹の中を洗いながら歯ブラシで背骨沿いの血合いや腹の中の黒い膜などを軽くこすり落とす。力を入れると身が崩れてしまうので注意。
B 給水布で水分を拭き、尻尾を切り落とし、半分もしくは3つにぶつ切りしておく。小さいいわしであれば切らなくてよい。
C フライパンに酒と水を同量、砂糖少々、2ミリほどに厚切りしたショウガを多めに、無添加梅干の肉もしくはチューブ入り練り梅を適宜、混ぜ合わせ、甘酸っぱく調味する。
D 強火で沸かしてアルコールがとんだら、火を中火に落としてイワシを並べ入れ、アクをとり、アクが少なくなったら蓋をして5分煮る。
E ここに醤油とミリン少々を加え、多少甘辛めに調味。アルミホイルで落し蓋をし、5分煮る。
F 火からおろし、冷ましながら味を含ませる。

 この方法のポイントは、初めから梅干を入れてしまうこと。梅干の酸によって、銀皮がはげない。
 問題はこの梅干で、最近はマトモな梅干が店に見当たらないので大問題。カツオ味やらハチミツ漬けやらで、料理にとても使えない代物。これをまた消費者が旨いと買うのだから、客も悪いんだ。その点、チューブ入りの梅肉は、産地の梅干を作るときにつぶれてしまったようなのを集めたものだから、これぞ本物。皮肉なもんだねえ。ともあれ、チューブ入り梅肉、オススメですよ〜。

 もうひとつのポイントは、最初は砂糖だけ控えめに使い、あとからミリン。同じ甘味料でも、砂糖は細胞を緩め、ミリンは細胞を引き締める、そんなしくみだ。最初は砂糖で中までふっくらと、最後にミリンで外側をキュッと締めて照りが出る、というわけ。料理は“しくみ”です。

このイワシの梅煮は、煮上がってしばらくもうまいが、常備菜として煮汁ごとタッパーに入れておけば1週間は楽しめる。その味の変化を毎朝楽しむ。これまた魚の魅力の深さだと思う。
 あとショウガはね、臭み消しではありませんよ、イワシやらのダシを吸って食べておいしいから入れるんであって、臭みは酒と火加減で分解させるのです。ショウガは臭みを分解してくれない。隠すだけなんだ。

イワシはねえ、ほんとに料理方法も多いし、実に滋味。同じ青ザカナでもアジ・サバ・サンマにはない、独特の甘酸っぱい肉と脂の香りをもっている。これがわかってくるといよいよイワシにはまるわけよ。他の、めくるめくイワシ料理の数々は、別の機会にご紹介しよう。ま、質問が来たら、ね。